UCデイビス流発酵食品アプローチ、その1
植物と人間の生命システムにおける微生物の働きの複雑さは重要な新しい洞察を重ね、分子レベルでの生化学解析論では最先端の状態に到達しました。
発酵食品における新しいコンセプト
カルフォルニア UCデイビス大学 食品科学技術学科 シャロン シューメーカー博士、偶然、発酵EXPOの空港行きバスで隣り合わせに成りお話できました。
行きがソウルから全州は、5時間かかりました。帰りは?現地の人は3時間だというのです。いくら日曜日の朝だから交通渋滞がないとは、言え・・・。しかし、実際そうでした。
知識は力だ。というのが、シューメーカー博士の口癖です。
さらに詳しくデザインフードの発酵食品についてお伺いしました。有機栽培の食品をバイオとよぶように微生物でデザインする食品をデザインドフードとでも呼ぶのでしょうか?「デザイナーホテルのように『デザイナーフードを食べるわ』という未来が来るかも知れませんね。」と言ったら、教授は嬉しそうでした。
3時間の個人レクチャーです。他の国の発酵食品の職人は、「現代的な食品は、健康に被害を起こす、昔に戻ろう」が主訴だと私は思うので博士の講演とは真逆ですね。と、伝えると反論されました。昔の食事のいいところをデーター分析し取り入れていこうという点では、同じではないかと思う・・・とのことでした。講演が始まる前に充分にお断りをしたつもりだったのは、食は場合によっては文化、倫理、宗教に絡むので個人を攻撃しているのではないということを博士は何度もおっしゃったといいます。確かにその後の、どの国で何を食べたというエピソードは、虫、爬虫類、両生類、鳥からいわゆる「げてもの」に至るまで様々でした。同感して笑ってしまったのは、ゲテモノは必ずチキンの味がベースにあるということ。何が体によく悪いかという発想は自分と同じで安心して話をすすめられました。肉や乳製品も少量取るべきだという反面、ベジタリアンも否定はしない、ということでした。
協力会社ということもあってカリフォルニアの名産「アーモンド」と「プルーン」を持ち歩いているのでプレゼントしてくれました。スーパーフルーツもおすすめですが、価格が問題です、と言っていました。
微生物の複雑な環境システムを管理しコントロールするお話です。
発酵食品は、その時々で最終のできあがり品が違いますが、同じものを作ろう!という話です。
UCデイビスのブドウ畑から取れた微生物をサンプルとして採取します。
↓
その微生物の完全なDNAを摂りだします。
↓
PCRというコンピューターですべてのデーターを解析して数値化します。
↓
DNAのなぞ解きをします。
↓
データーを分析します。
これで例えば、大腸菌に耐性のあるレタスが栽培されたり、耐性のないものを作り比較したりします。
現在、UCデービス メイドのワインがデーターコントロールでできています。栽培年に左右されない同水準のワインを作っています。
もちろん土壌の微生物でどれが最適なのか?を探し、ワインの発酵に使う微生物にカビ菌由来が入ってないか?一番いい微生物は何かを突き止めます。
ビールも行っていますが、こちらは比較的データーコントロールが可能です。チーズもおこなっており、おいしいチーズのデーターとまずいチーズのデーターは可視化できるようになりつつあります。
ラットレベルの実験ですが、小腸の中の微生物のコントロールで肥満を抑制することが証明されています。微生物だけでなくその酵素もデーターベースにしています。味覚のデーターコントロールもしています。
翻ってヒトとは、宇宙のように全体で調和をしているシステマチックな生物なのです。
酵素のデーターをヒトの内側での採取もする一方で、食物そのものの酵素の分布もデーターで調べています。
明らかなのは、サラダとハンバーガーでは、サラダが酵素の量も質もよく、ハンバーガーは反対であることが可視化されました。
ところで、味噌汁は完全な発酵食品ですが、味噌を発酵熟成する時に、安定させるために塩を使わざるをえません。
その塩は体にいいものですか?高血圧の原因になる塩を使わないで味噌を作れないか挑戦しています。
発酵熟成している時に圧力を変えることと、生物反応槽の作用で塩なしの味噌を作っています。これは、もうちょっとというところでしょうか?
麹発酵から協力会社と現在玄米の栄養成分もいかす「プロバイオティックな飲み物」を作っています。
さらに、今挑戦しているのは、トウモロコシをとったあとの茎など農作物の廃棄物から食品を作ることができないだろうか?ということです。