コンプライアンスで転ばぬ先の杖!
注意事項を予め用意すること
キャンセルポリシーの重要性、リスク管理体制がインバウンド・ビジネスに必要となる理由は?簡単にお伝えすると、多様なお客様、特に訴訟することが日常にある世界から訪日した外国人を相手にするので、事前に備える必要があるということです。
逆に言えば、備えておけばルールが伝わる分、日本人のクレーマーよりも楽に対応できる時もあります。日本人のような「そこを何とか」という文化がありませんので、ルールはルールで遵守するというお話をすれば、相手は納得します。また、キャンセル料金もすんなりと支払ってくれます。
因みに、英語圏でもそこをなんとかという人は時々います。アメリカでは、私にもうちょっとピクルスをください・・・と、慣用的に言うそうです。ハンバーガーのピクルスを私にだけおまけしてくださいってことなのですが、もっと大きな問題だと困ります。
また、細かい話ですが、無料のサービスというのを日本人はついつい行ってしまうのですが、オススメしません。例えば、一般的な旅館に到着し、部屋に荷物を運ぶのを訪日外国人は、チップを払ってでも自分が行わない仕事とみなしています。ところが、これを旅館のスタッフが玄関から全ての部屋に振り分けて無料でお持ちするというのは、骨が折れるだけでなく、人手不足に繋がります。「日本人客は自分で荷物を運ぶから」「放っておけば、荷物だけが玄関にいつまでも置いてあるから。言葉がわからないから・・・」という理由ならば、訪日外国人にも同じルールを適応するべきです。コミュニケーションができれば問題解決ができます。
あるいは、客単価を上げて、富裕層相手のホテルと同等レベルとして、無料で全て荷物を運べばいいことです。
ひとりが2つのスーツケースを持って旅行することもあります。全てを運び終わって、チップをあげようとしたら、日本人スタッフにそれは上司が怒るからダメだと断られたと不思議そうにしているアメリカ人がいました。これを「日本はおもてなしの文化」だとは、解釈していません。全ての荷物が各部屋に届く時間が遅ければ良いサービスではなかったことになります。
逆にルールがないところを「暗黙の了解」「腹の探り合い」「言わずと知れた」という感覚が通用しません。特に、法律に触れていないけど慣習としてダメだとか、最初のルールに書いてなかったのに、途中でダメにしたとか・・・。通用しません。
特に温泉施設にあるような漫画でルールが説明してあるものは、誰もが理解できて素晴らしいです。
クレームの矛先
皆さんの事業体に対して、消費者センター、市役所、警察に行くような外国人はあまりいませんが、口コミに酷いことを書かれたり、事故で済ませたいこちらの事情を理解せず、訴訟、裁判と進んでしまったり、することもあります。直接、皆さんの事業体にあるカスタマーサービスの窓口に申し出る場合がほとんどです。口コミサイトは、マーケティングツールとして威力を発揮しますが、同時に営業妨害を簡単に行うことができる脅威の存在でもあります。裁判になった時は、弁護士を通して応ずるしかありませんが、こういうこともコンプライアンスに気をつけて事前に文章でお断りをすれば、防げることがかなりあります。
これも細かい話ですが、居酒屋で出るお通しは、訪日外国人を相手にする場合やってはいけないサービスです。頼んでもいないのに一品出てきて、それが請求されるというのはお金に細かい訪日外国人としては、納得できないものです。
また、クレームが出た時は、相手がいるうちに交渉しましょう。帰国されてから訴訟されると大事になります。現場で対処するうちにミスを許してくださることもあります。コミュニケーションを良くすることがここでも重要になります。
日本の中では大丈夫でも訪日外国人を相手にしているならば、国際的なビジネスをしているホテル、レストランを研究して、それに合わせましょう。例えば、煙草に関して言えば全面禁煙というのがグローバルな基準です。
一方で近隣住民や同じ商店街の方々がクレームを言いにいくのは、消費者センター、市役所、警察という窓口です。日本人の方がお金を不当に取られた、という内容でクレームに行くことはないのですが、ルール外で民泊をやっている、訪日外国人がたむろしている、外国人観光客がたくさん来てうるさい、という内容がほとんどです。中には嫉妬や妬みからのお申し出だけという案件もあります。
安全対策には、ヒヤリハット
日本インバウンド・アテンダント協会は、企業の安全大会に呼ばれてお話をする機会が多いのですが、これは航空業界、旅行業界がテロ対策、安全運行を昔から気をつけているためにノウハウの蓄積が多いからです。水と安全はタダと言われた日本ですが、観光立国になるという意味だけでなくグローバル社会であれば、安全基準が厳しくならざるを得ません。何かが起きてからでは遅いのです。
1つの災害が起きた場合、29の小さな怪我があり、300の不安全状態・不安全行動が存在するというのを「ヒヤリハットの法則」と言います。ヒヤリハットは英語だと思っている人が少なくありません。しかし、「ひやり」としてハッとするという日本語です。大きな事故が起きる前に「ひやり」とするような因子がいくつもあったという事象です。危ないなぁと感じても上司が怖くてそれを伝えられない、そのために大きな事故になったというケースが多いのです。
安全対策では、日頃の双方向コミュニケーションを大切にすることを元にお話をしています。何故ならば、素晴らしいコミュニケーションができて、友人のようになれば、ちょっとした事件事故が起きても相手が「訴える!」とは、なりませんよね?
クレームの対処法
また、海外のクライアントさんを怒らせたというような内容で日本人のお客様がクレームをしてきた時は、日本風の対処の仕方が適当な場合があります。案件は詳しく説明できませんが、日本支社長が菓子折りを持って謝りにいき事なきを得たことがあります。スピードがひとつの大切な要素になります。
できるだけまだお客様が目の前にいるうちにクレーム処理をしてしまうのが懸命です。お帰りになってから、ホテルに出向いたケースやお手紙を書く手間、そして一番たいへんなのが訴えられた場合、国際弁護士を雇わなくてはならなくなります。その後の対処を考えると体力がある会社でなければ難しい結末を招きます。
英語でのクレーム処理は、基本的に日本語と同じですが、絶対に言ってはいけないことがいくつかあります。それも当協会の講座で勉強してみてください。英語のクレーム処理は、英語が母国語の方でもわざわざ勉強するだけの価値があるものです。
近隣住民のお申し出。ほとんどの問題が事件事故ではありませんから、行政側は対応の仕方がないために、皆さんのところにいらっしゃって、皆さんのサービス自体をやめてもらえれば、クレームも減るのに、という主訴になります。法律に触れてなければ、やめる必要はありませんので、改善策を提案しましょう。同時に、近隣住民にもコミュニケーションを取る必要があります。
方法としては、訪日外国人と触れ合える開放日を設けるというのはいかがでしょう。十勝にあるホテル ヌプカは、アメリカはポートランドのホテルを真似して作りました。宿泊客と近隣住民が触れ合えるイベントを多数用意しています。十勝駅からも近いオシャレなホテルですが、ロビーではセミナーも行えます。また、クラフトビールをあれば、作っているので食事も楽しめます。
リスク管理体制。クレームにどう対処するか?ばかり研究するのでなく、お会いしている時、周りも含めてどうコミュニケーションよく行動していくか?これがポイントです。