2020年1月8日
発酵現場レポート・・・北の大地から
ニッカウヰスキー北海道余市蒸溜所
見学レポート
見学日2019年9月11日
https://www.nikka.com/distilleries/yoichi/
なぜ余市に蒸溜所ができたのか
環境:創業者の竹鶴政孝氏がスコッチウイスキーを作るにあたりスコットランドにできるだけ近い気候風土を備えた場所が必要でした。
余市の環境はスコットランドの環境に近いということがあげられます。
原料:余市岳の雪解け水は原酒の仕込み水に最適であり、石狩平野には香りづけのピートや石炭も発掘できたため製造に必要な材料も揃っていました。
スコットランドの気候を余市で堪能。
余市駅を降りてすぐに感じたのは「空気が澄んでいておいしい」ということでした。自然の力を借りて食品を製造するには条件の揃った気候や、
必要な材料がすぐに調達できることは大切なんですね。
創業者 竹鶴政孝氏
・1894年広島出身 「竹鶴酒造」の3男として生まれる。
~大正時代はウイスキーと言えば模造品ばかりの時代~
・1918年 摂津酒造の社長・阿部喜兵衛は竹鶴氏にスコットランドでウイスキー作りを学ぶよう打診する。
・1920年 スコットランド ヘーゼルバーン蒸溜所での修業、リタと出会い結婚
・日本へ帰国
≀
・1934年「大日本果汁株式会社」を設立
・1940年 余市蒸溜所でウイスキー製造の開始
・1952年「大日本果汁」から「ニッカウヰスキー」に社名を変更
・1969年 宮城峡蒸溜所施工
・1970年 北海道にて開発功労賞
・1979年 死去(享年85歳)
ウイスキーの定義
モルトウイスキー
大麦を原料としたウイスキーの呼び名である。スコッチウイスキー
は大麦麦芽(モルト)のみを原料とし、単式蒸溜窯で2~3回蒸溜さ
せたものである。
シングルモルト
一つの蒸溜所で作られたモルトウイスキーを言う。
ブレンデッドウイスキー
モルトウイスキーとグレーンウイスキー(トウモロコシや小麦、ライ麦な
どを主原料に作られたウイスキー)をブレンドしたもの。
※上記はスコッチウイスキーの定義。アメリカンウイスキーの場合は定義が異なる。
製造工程について
⃣仕込み
①大麦発芽(発芽によってデンプンを糖化させ、酵母が分解できるようにする必要がある)
②大麦を乾燥(モルト)
③モルトを細かく砕く
④温水(65度)を加え麦芽の糖化酵素によりデンプンを糖化
⑤④を濾過する(麦汁)←糖化しているので甘い
2.発酵
仕込みで作った麦汁をアルコール分約7%の発酵液に変える工程を発酵という。発酵中の麦汁に酵母を加えると、酵母は麦汁中の糖分を分解し、アルコールと炭酸ガスに変え、ウイスキー特有の香味成分をつくる。酵母の種類や発酵条件によって香りなどに特長がでる。約60時間で発酵は終了、これでできた発酵液をもろみと呼び、この段階でのアルコール分は約7%。
3.蒸留
発酵の終わったもろみを銅製のポットスチルと呼ばれる単式蒸溜器にいれて二度蒸溜し(一回目を初溜、二回目を再溜と呼ぶ)アルコール濃度を65~70%に高める。この生まれたばかりのウイスキーをニューポットと呼ぶ。仕組みとしては、アルコールが約80度で沸騰する性質を利用し(沸点の違いを利用)、蒸気を発生させこれを冷却、液体化させ、アルコールや香気成分などの揮発成分だけをとり出す。
4.熟成
蒸溜で出来たニューポットを樽の中で長期間じっくり寝かせる。これが貯蔵という工程。そして3年、5年、15年。ウイスキーの琥珀色、奥深い味わいの秘密はこの貯蔵、樽熟成にある。樽は樽材、内面の焼き方、大きさなどの違いがある。
ウイスキー原酒は長い眠りにつき、貯蔵環境(気温、湿度)によっても熟成の度合いが微妙に変化し、複雑な反応を見せ、多彩なウイスキー原酒が生まれるのである。樽熟成のメカニズムはまだ解明されていない部分もある。樽で熟成されたモルトウイスキーは麦芽の種類、酵母の種類、蒸溜方法、樽の種類、貯蔵場所、貯蔵年数などさまざまに組み合わされ、掛け合わされ、多岐にわたる。製品化する時はこれらの中から数十種類のタイプに分け、樽からウイスキーを取り出していく。
5.ブレンド
ブレンデッドウイスキーの場合モルト原酒と麦以外の原料で作ったグレーン原酒をブレンドする。個性の強いモルト原酒と個性の穏やかなグレーン原酒が新たなハーモニーを生み、ブレンデッドウイスキーの香味が仕上がる。
モルト原酒同士を混和することをヴァッティングと呼ぶ。ちなみに熟成年数表示は、使用されたモルト原酒の中での最低年数を示しており、ヴァッティングされるモルト源酒の平均熟成年数はもう少し高くなる。
試飲
ウイスキーとアップルワインの試飲をしました。元はリンゴ果汁を扱っていた名残か、アップルワインも製造しているようです。
実は私、ウイスキーはそれほど得意ではないのですが、製造過程や竹鶴氏の努力を知ったことで、普段より美味しく感じられました。
終わりに
ウイスキーを振り返る
ウイスキーは自然の力×人間の工夫×時間によって作られている結晶であることがわかりました。どれが欠けても作ることのできないものであり、人と環境は今後も良いバランスで関わっていかなければならないことを学びました。
発酵ソムリエの視点から
発酵は普段口にしたり、体内でも行われている身近なものではありますが、身近ゆえにその力や恩恵を見逃しているものも多く、今回ウイスキーを通し発酵の恩恵に改めて気付くことが出来ました。今回の体験から今後は発酵を通し、人と環境の関係について伝えていきたいと思います。
発酵ソムリエ Y・I
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