2019年3月6日
酒飲みのテーマパーク石川酒造へようこそ!
2019年3月6日
発酵ソムリエ 現地レポート
林 稜子
日時 :2019年3月6日
場所 :石川酒造(拝島駅)
■石川酒造について
- 石川酒造は1863年(文久3年)に創業した蔵元であり、156年の歴史があります。
- 敷地には国の登録有形文化財に指定された建造物が6棟あり、レストラン、買い物、見学が楽しめる「酒飲みのテーマパーク」となっています。
- 石川酒造の銘酒「多満自慢」は、「多摩の心をうたいつつ、多摩の自慢となるよう、多くの人達のこことを満たすことができたら」という願いを込めて命名されました。
- 「多満自慢」が醸造されている本蔵は1880年(明治13年)に建築された蔵になります。国登録有形文化財に指定されている建物です。
- 石川酒造では8月末から9月にお米が届き、正式に造りが始まるのは9月になります。秋から春先まで仕込みを行うことを「寒造り」と言い、1年を通して仕込みを行うことを「四季醸造」と言います。(石川酒造は寒造り)
- また、「甑倒し」と呼ばれる最後のお米を蒸し終わる日を迎えて、ひと段落付くのが3月末頃で、しばらく「仕込み」はお休みとなります。
- 石川酒造で使用されている仕込み水は150M地下から汲み上げる中硬水を使用しています。
■日本酒・お米について
- 「心白」はでんぷん質で、麹菌の栄養分となります。そのまわり表層部はタンパク質、脂肪分で、酒の香味を損なう原因となります。日本酒はお米をどれだけ削るかということで味に差が出ます。
- お米を削り残った割合を精米歩合といい、%で表します。
- 酵母の餌となるでんぷん(糖)のみ必要なので、そのまわりにあるものは不要(これを雑味と言う)であり、この雑味はお米を磨けば磨くほどなくなります。(これをきれいと言う)
- 精米歩合が35%の日本酒は、雑味がほとんどないため、万人受けする味になります。また使えるお米の量が少ないこともあり、値段も高価になります。⇒贈答品等の特別な時に向いている。
- 一方で、精米歩合が70%の日本酒は雑味が入っているため、味の好みが分かれます。
- 精米歩合が50%以下のものは大吟醸と呼ばれます。
■日本酒ができるまでの工程
- 洗米…高級な日本酒は10キロ単位に分けて洗米します。
- 浸漬…米の磨き具合、前日の天気や湿度により吸水の時間は秒単位で変えます。綿密に計算して浸します。
- 蒸米…お米を蒸すことを言います。
- 製麹…蒸したお米に麹カビの種を蒔き、「米麹」を作ります。
- 酒母造り…蒸米、米麹、水を入れたタンクに酵母を入れ、発酵に必要な酵母の量を増やします。
- 醪…タンクに酒母、蒸米、麹、水を仕込み、発酵している状態のものを醪と言い、4日間かけて仕込み
ます。(三段仕込み)
- 並行複発酵…米のでんぷんを麹が糖化/糖が酵母の働きでアルコールに変化⇒これを並行して行っているため、並行複発酵と言います。
- 櫂入れ…毎日、蔵人(一番偉い人は杜氏)が醪の状態(見た目や香り等)を確認し、状態に合わせて櫂入れを行います。櫂入れは発酵の促進や温度の均一化の為に行っています。
- 上槽…醪を搾り、日本酒と酒粕に分けます。「槽(ふね)」という圧搾機を使い、したたり落ちる雫のみを日本酒にします。☆槽でしぼって甕でのむことから、石川酒造には「かめぐち」という日本酒があります。
- 瓶詰め…蔵で管理を行い、飲み頃になった日本酒はラベルに合った酒質に整えられ、異物混入がないか等の厳しい品質チェックを受けて、瓶詰め、ラベル貼りをされて商品となります。
- その他の工程として火入れ(搾る前に発酵を止める加熱処理/殺菌のため常温流通が可能になる)や加水(仕込み水を入れることでアルコール度数を調節)、熟成(貯蔵タンクで寝かせ、バランスが整うのを待つ)、ビン貯蔵(瓶詰め後に冷蔵庫内で熟成させる)等の工程があります。これらの工程は行わなくても日本酒はできます。
■日本酒の種類
- 大吟醸とは精米歩合50%以下で、吟醸造り(伝統的によりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、特有な芳香を有するように醸造すること)を行っていること。かつ麹米の使用割合15%以上であること。
- 純米とは原材料が「米」「米麹」のみであること。
- 生酒とは発酵を止めるための「火入れ(熱処理)」と瓶詰め後の「火入れ」、その両方を一切行っていないもの。※但し、生貯蔵は出荷前に火入れを行います。
- 原酒とは搾った後に加水調整をしていないこと。(1%までの加水は行ってもよく、加水を一切行っていない場合は「無調整」となります)
■見学後の試飲
- 酒蔵見学後に石川酒造で作られている日本酒・梅酒を頂きました。
- 大吟醸多満自慢、純米大吟醸たまの慶、純米原酒あらばしり生酒、しぼりたて純米生原酒かめぐち等、それぞれ味わいも香りも様々で非常のおいしかったです。
- 特に印象的だったのは、先代も現当主も気に入っておられる純米大吟醸たまの慶は青い草原のような香りと味がしました。今まで飲んできた日本酒にはない香りと味だったので、とても印象的でした。
以上